アルバイトのみのキャリアから、事務職正社員への転職を実現。一緒に就職を目指す仲間の存在が心強かった
スタッフサービスでは、2022年に兵庫県のスキルアップ即戦力化支援事業(令和4年度緊急対応型雇用創出事業)を受託しました。新型コロナウイルスの影響によって、キャリア形成の道筋が見通しにくい状況に陥っている県内の求職者に対し、研修と企業での職場実習の機会を提供し、未経験からの就業や企業での直接雇用を目指していくこの取り組み。実際の参加者はどのようなキャリアを歩んでいるのでしょうか。
このプログラムに参加し、現在は県内の物流企業で事務職として直接雇用に転換し正社員として働く丸山 汐香さんと、本プロジェクトを統括するスタッフサービスの名合 光央さんにも取り組みのポイントなどを聞きました。
コロナ禍での雇用情勢の悪化。雇用・就業の機会を増やしたい
新型コロナウイルスによる社会経済の混乱は、企業の休業や倒産、サービス縮小による離職や、新規採用の見送りなど、全国各地の雇用にさまざまな影響を与えました。それは兵庫県でも同様で、有効求人倍率の低下や、コロナに係る解雇などの見込数の増加、雇い主都合の離職者数の増加、雇用情勢の悪化が見られました。
こうした状況に対応するために、兵庫県は緊急雇用創出事業の実施を決定。スタッフサービスは、兵庫県の取り組みが当グループの経営理念に掲げる「チャンスを。」にも通じるものと捉え、本事業への参画に手を挙げました。
「JOBスク兵庫」と名付けて実施したこのプロジェクトは、約3か月の研修と企業実習を組み合わせたプログラム。1か月目には働く上で必要なスキルを対面研修やオンライン研修を受講します。その後は派遣契約で約2か月の企業実習を経て、派遣期間終了後は参加者と実習先企業(派遣先企業)の双方の合意が得られた場合には、企業との直接雇用に移行するという仕組みです。2022年7月から実施した第1期生は、20名中9割にあたる18名が就業を実現し、うち7名が企業の直接雇用の社員へ転換(2022年11月末時点)。今回お話を伺った丸山さんもそのひとりです。
2か月の派遣期間があったから、新たなチャレンジに安心して一歩踏み出せた
小さい頃から、落語や歌舞伎などの古典芸能が大好きでした。学生時代のアルバイト先は、寄席などが行われる演芸場。劇場の運営スタッフとしてチケットのもぎりや会場案内、場内清掃を担当。そのうち、チケット販売や事務所の電話対応などもやるようになり、新人アルバイトの育成なども行っていました。
就活の時期になっても演劇や舞台に関わりたいという想いは一貫していたので、このまま社員として働きたいと相談。当初は登用される予定だったものの、コロナ禍の影響が長引いたことで段々と雲行きが怪しくなり、大学卒業間近のタイミングで見送りになってしまいました。仕方なく引き続きアルバイトで働くことにしたものの、アルバイトの給与では心許なくこのままの立場で続けるのは難しいと判断。演芸場の仕事は大好きでしたが別の仕事を探すことにしました。
ところが、新卒で就職した経験のない私には、希望する演劇関係の会社に未経験から応募するチャンスがほとんどありませんでした。そこで今の自分にできる仕事は他にないかと、演芸場で少し経験した事務職を志望しましたが、実務経験と評価してもらえるほどではなく就職には苦戦していたんです。
そんなときにたまたま母が情報を見つけて勧めてくれたのが、兵庫県のスキルアップ即戦力化支援事業「JOBスク兵庫」。実務経験がないことで就活に手詰まり感があった私にとっては、スタッフサービスの派遣スタッフとして企業に派遣される形で実際に働きながら、直接雇用を目指すという点が魅力的でした。
1か月目の研修では、ビジネス上のコミュニケーションの仕方やWord、Excel、PowerPointの使い方など、社会人としての基礎から学習。その期間に同期生と話す時間がたくさんあったことが、私には励みになりました。というのも、新卒とは違いひとりで孤独に就活する中で不採用が続き、世の中から置いていかれたようなもやもやした気持ちを抱えていたんです。参加している人たちは、職歴や状況は人それぞれですが、新たな仕事にチャレンジしたいという想いで参加しているのは私と同じ。一緒にがんばる仲間の存在を感じられたことが、私の不安を軽くしてくれました。
その後は今も勤務する生果の物流会社で2か月間の実習。私の仕事は果物をスーパーなどの小売へ出荷するための在庫管理から出荷に関する事務業務です。最初はパソコンで行う自分の作業を覚えるだけで必死でしたが、隣の席の先輩が私のわからないことを丁寧に教えてくれるうちに、少しずつ仕事の全体像が理解できるように。自分の担当する業務が何のために存在し、どこに影響を与えるのかがわかると、少しずつ手ごたえを感じるようになりました。
また、実習期間は直接指導してくれた先輩だけでなく周りのみなさんも含めて職場の雰囲気に触れられる良い機会になりました。今の職場はちょうど採用を拡大しており、私のほかにも数か月まえに勤務をはじめた社員が多く、みんなで協力しあって仕事を覚えていこうという雰囲気があることに私は助けられています。こうした環境面を実習期間に確かめられたからこそ、私は実習終了後も引き続きここで働くことに安心して踏み出せたと思います。
アルバイトを続けているときは将来への不安が大きかったですが、今の会社に正社員として入社したことで、収入も増えて安心して生活ができるようになりました。とはいえ、一人前に仕事を任せてもらえるにはまだまだです。ここで社会人としてのスタートをようやく切れたからこそ、早く一人前になって周囲のみなさんの役に立ちたい。その一歩として今度新しく受け入れる派遣スタッフさんの教育担当を任せてもらいました。未経験から仕事に挑戦した人の視点で分かりやすく教えていくことが、次の私のチャレンジです。
就職はゴールではない。自分の将来を描き、行動してみることが自分の財産になる
スタッフサービスが、新型コロナウイルスを背景とした自治体の緊急雇用支援事業を受託するのは、滋賀県に続き、今回が2回目です。他県で培ったノウハウを持つ立場として今回私たちがこだわったのは、プログラムの参加者同士が身近に感じられる場づくり。スキルを学ぶためだけであれば座学の研修はオンラインのみでも実施可能ですが、今回は県内の感染状況を見極めつつ、対面での研修実施を取り入れました。
丸山さんがおっしゃるように、求職者のなかにはひとりで孤独を感じながら就職活動をしている方がいます。実務経験が少ない方や長期のブランクがある方であれば、更に不安は大きい。わからないことや上手くいかないことに直面して、諦めてしまいたくなる瞬間もあるでしょう。だからこそ、一緒に取り組む仲間の存在から安心感を得たり、まわりと切磋琢磨したりできるような関係性の強化をポイントにしました。
また、私がプログラムの初期に受講者一人ひとりと面談をしてお伝えしたのは、「就職がゴールではない」ということ。3か月後に就職をするという目標だけを追いかけていると、仕事内容や職場環境に違和感があっても安易に就職先を決めてしまいまかねません。後になって「やっぱり無理だった」と離職してしまう方が、個人にとっても企業にとっても損失です。「本当に自分のやりたいことは何なのか、そのために何をする(学ぶ)と良いのか…」と中長期についてじっくり考えてみること。就職をゴールにするのではなく、その先にどんなキャリアや働き方を実現したいのかというプランを描くこと自体が大切だと考えています。それがあれば、私たちの支援が終わってからも、自分の実現したいキャリアや働き方に向かって主体的に成長していけると考えるからです。
コロナ禍の影響を受けた社会の動きは刻一刻と変化しています。現在、国や自治体の取り組みは雇用の確保から、人手不足の解消という文脈が強くなってきています。注力産業に新たに人を呼び込むうえでは、スキルや知識の学び直し(リスキリング)が重要です。その意味でも、未経験から派遣での実務経験を経て直接雇用につなげていくという、スタッフサービスが提供できるこの仕組みは有効だと感じています。中長期を見据えた人材のマッチングと定着のノウハウを活かし、これからも全国の雇用を活性させていきたいです。
※所属や肩書は取材当時のものです。
\お読みいただき、ありがとうございました!/
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