社内初、精神障がいのあるマネージャー。誰もがキャリアを諦めずに働けるよう、自分が轍となって道を示したい
スタッフサービスグループの特例子会社である株式会社スタッフサービス・ビジネスサポートでは、多様な障がい特性のある社員を雇用しており、一人ひとりが自分らしく活躍できる組織を目指してきました。同社では、2022年に社内初となる精神障がいのある役職者が誕生しています。当事者であるマネージャーの安河内 豊さんは、一般的には体調に波があって安定的な就業に不安があると言われる自身の特性と上手に付き合いながら、新たな役割に挑戦中。そんな安河内さんと、上司であるゼネラルマネージャーの関 尚毅さんにこれまでの道のりを聞きました。
障がい特性に関わらず、一人ひとりの個性を活かして働き続けられる職場を
今、社会全体で機運が高まっているダイバーシティ&インクルージョン。実現に向けたテーマの一つが、障がいのある方々の社会参加です。厚生労働省による調査では、日本における障がい者の方の数は964.7万人。これは人口の約7.6%に相当しており、419.3万人を占める精神障がい者の方を中心に増加傾向にあります。(引用元:厚生労働省「障害保健福祉施策の動向等(2021年3月)」)
スタッフサービスグループでは、特例子会社である「株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート(以下、SSBS)」で多様な障がい特性の社員を雇用。「チャンスを。」のグループ経営理念のもと、「障がい特性で区別しないチーム運営」と「一人ひとりにあった、心と身体の健康サポート」の2点を重視した職場づくりをおこない、約9割の社員が勤続5年以上、約半数が勤続年数10年以上を実現しています。
福岡の西日本サポートセンターに所属している勤続7年目の安河内 豊も、SSBSで長く働く社員の一人。精神障がいがあり、入社当時は体調が不安定で勤務に苦労したという安河内ですが、2022年の春から組織を率いるマネージャーのポジションに挑戦しています。
違いを個性と認めあえる環境だから、他人と比べず自分らしく挑戦したいと思える
大学時代に、気持ちが激しく浮き沈み、夜も眠れないような症状が現れました。診断の結果、精神疾患が判明。症状が落ち着いて仕事を探そうとしても、精神障がいがあることがネックとなり、不採用の連続でした。ようやく受け入れてくれたのがSSBS。でも、精神障がいに対する偏見や、昔からの友人たちと自分を比べて感じる焦りや不安から、入社直後は自分のことを素直に打ち明けられませんでした。
もともと負けず嫌いな性格なこともあり、同期入社の誰よりも仕事ができると認められたかった。しかし、当時は症状を抑える薬の副作用で急に強烈な眠気が襲ってくるなど、自分の体調が思うようにいかないことに苦しんでいました。そんなときに助けられたのが仲間と上司の存在です。チームで協力しあい、辛いときはお互いさま。思いやりと助け合いの精神で連携しながら仕事を進めるスタイルだったことに救われました。
また、上司は私の精神障がいの特性を理解しながらも、過度な配慮で任せる業務を区別するのではなく、フラットに何でも挑戦をさせてくれた。生きづらさを感じていた自分にとって、障がいに関わらずフェアに接してくれることが本当に嬉しかったんです。
そんな私が入社以来担当してきたのは、スタッフサービスグループが扱っている「お仕事情報」をWeb上に掲載する業務です。一貫してこだわってきたのが、無駄を減らし効率的に業務を進めること。業務効率が上がれば、仕事を探している人に早く情報を届けることができます。また、自分が仕事とプライベートのメリハリをつけるためにも効率的に仕事をすることは重要。生活リズムが安定していると心身の健康にも良いので、チームで協力しながらワークライフバランスを保つことを意識しています。
2022年の4月からマネージャーとして組織運営に挑戦中。入社当時の私がそうされて嬉しかったように、メンバー一人ひとりの特性・個性は理解しながらもフラットでフェアな接し方をするマネージャーであろうと努力しています。また、メンバーが楽しく仕事ができる環境であるように、私自身が仕事を楽しむことや余裕があることも大事にしていますね。
最近、長年感じていた生きづらさからようやく少し解放された気がしています。それは、SSBSで自分らしくチャレンジを続けていくうちに、他人と自分を比べなくなったから。違いを個性として尊重すること。チャンスは誰にでも平等であり、自分次第で掴めることをここで学びました。だからこそ私には目指していることがあります。私は社内初の精神障がいのあるマネージャーですが、同じ境遇の人に後に続いてもらい、いつか特別なことではなくなってほしい。そうなれるように私自身がマネージャーとして信頼され実績をつくることが、これからのチャレンジです。
アンコンシャスバイアスから抜け出し、あくまでも個人を見て評価することが大切
安河内さんを抜擢したのは、マネジメントに若手層を増やして組織を活性したかったのも理由の一つです。誠実で真面目、周囲の評価が高い彼であれば、メンバーからも信頼されるマネージャーになってくれるのではないか。フラットに自組織のメンバーを見渡して一番任せたいと思える人物でした。
しかし、社内では精神障がいのある社員がマネージャーになった前例がなかった。普段から障がいによる区別をしない組織運営をしてきた私たちでしたが、それでも「心身のバランスを崩しやすい特性を持つ人にはマネジメントを任せられない」といったアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)が邪魔をしていたのだと思います。だからこそ、人事会議ではあくまでも安河内さん個人のスキルや特性、業務成果を見てマネージャーにふさわしいかを議論。彼を知る周囲の人たちからの後押しもあって、マネージャーに任用しました。
2022年の4月から約半年で期待以上の成長を見せてくれており、非常に頼もしい限りです。ただ、自分のペースを越えてがんばりすぎることは彼にとって強いストレスになってしまう側面もあります。そのため1年間は新人のつもりでじっくり慣れていこうとアドバイス。いきなり全てを任せるというよりは、まずは障がい者の職業生活全般の相談・指導を行う「障害者職業生活相談員資格認定講習」の受講からはじめ、得意を伸ばし可能性を引き出す基礎をしっかりと習得してもらっています。障がい者が職場に定着して長く働けるように支援するための「ジョブコーチ」も受講。焦らず着実にマネジメントスキルを高めていこうという方針で、私も伴走をしながら成長を見守っています。
彼に限らず、SSBSでは障がいの特性にあわせた合理的な配慮はしながらも、一人ひとりの個性にあわせた仕事や働き方で活躍する道を模索。これまでの社員を見てきたなかで個人差はありますが、傾向として感じるのは精神障がいのある方はマルチタスクで業務を掛け持ちするよりも、シングルタスクに特化して一つの業務の量と質にこだわる方が得意。例えば事務作業を効率化するためのアプリ開発など、今の時代に合ったDXやIT人材として活躍できる可能性も十分にあると感じています。
そんな風に、私たちはこれからもともに働く一人ひとりの活躍を引き出すことで、障がいに関わらず仕事で輝ける人をもっと増やしたい。実際に接していると感じるのですが、彼らの多くは非常にまじめで仕事を通じて社会と繋がりたい成長意欲の高い方ばかりです。彼らの想いを受け止められる仕組みや組織へと進化を続け、SSBSおよびスタッフサービスグループ全体で働きたいと願う全ての人にチャンスを提供していくことが、私たちの目標です。
※所属や肩書は取材当時のものです。
お読みいただき、ありがとうございました!
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