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42ヶ国、1,100人以上の外国人を全国に派遣する会社の工夫とは?

スタッフサービスグループの中で、製造分野における人材総合サービスを展開しているテクノ・サービス(以下、TS)では、現在42ヶ国から1,100人以上(2023年12月時点)の外国籍派遣スタッフが活躍しています。

今回は、外国籍派遣スタッフに安心して就業してもらうため、外国籍人材の就業に力を入れている伊藤いとうかおるに立ち上げの経緯やどのような工夫をしているのか、ご紹介します。


外国籍スタッフの活躍を阻む2つの"不" 「労務管理」と「労働慣習」

伊藤 薫(いとう かおる)
株式会社テクノ・サービス
営業統括本部 CRM・グローバル部 ゼネラルマネージャー

TSの主な派遣先は製造業。少子高齢化などの影響を受けて製造業の人手不足は深刻で、大きな課題です。解決策のひとつとして、外国籍派遣スタッフの雇用をさらに拡大できないかと考えたのが現在に至ったきっかけです。

2015年頃には外国籍派遣スタッフの就業が全国に点在していましたが、営業担当や派遣先企業との円滑なコミュニケーションができない現状があると聞いていました。日本に根差す「永住者」や「定住者」といった身分に基づく在留資格を持ち、就労の制限がないにも関わらず、言葉や文化の壁でチャンスを生かせていないというのです。

きちんとした支援があれば、日本で活躍できる方がまだまだいるはず。そんな外国籍派遣スタッフが安心して就業できる環境を整備したいと思い、2017年に外国籍派遣事業を推進する組織を立ち上げました。

実態を知るため、まずは自らが外国人とともに働いてみようと考え、2名の外国籍従業員を採用。すると、引越しの手続きや社内規定の説明などを自らおこなうなかで、外国籍派遣スタッフの活躍をはばんでいる「労務管理」、「労働慣習」の2つの”不”が浮かび上がりました。

例えば「労務管理」では、外国籍の社員を受け入れる側にとって、各国の就労ビザの真偽や期限をチェックするのは煩雑。従業員にとっても年末調整や社会保険など、独特な仕組み、複雑な申請書類などは日本語が話せるようになっても、読み書きはまた別の問題です。あまりに難しく手続きを諦める人もいることがわかりました。

「労働慣習」では、日本で働く上での法律や職場独自のルールについて外国籍の方に伝えることが難しく、外国籍スタッフは質問したくてもできない、雇用側は伝えているのに理解されないという状況が起こっていました。しかし、これらの課題さえ払拭できれば優秀な従業員が揃うということを実感したんです。


”不”の解消はコミュニケーションを通じた相互理解

GCCで働く従業員の様子

2つの”不”を解消すべく、2019年8月に外国籍派遣スタッフの専門部署である「グローバル・コーディネート・センター(以下、GCC)」を立ち上げました。

GCCはブラジル籍、フィリピン籍、中国籍、ベトナム籍、ペルー籍の当社の外国籍従業員16人で構成されています。主な仕事は、外国籍派遣スタッフ、派遣先企業、営業担当やコーディネーターに対するサポートです。

外国籍派遣スタッフには母語を用いて電話やメールでの就業支援や相談を、派遣先企業には業務マニュアルや書類などの翻訳や労務管理のサポート、営業やコーディネーターには外国籍の派遣スタッフとの間に入って通訳をおこないます。対応言語は、ポルトガル語、英語、タガログ語、中国語、ベトナム語、日本語でスタッフの母語に応じて使い分けています。

GCCのサポート一例(外国籍派遣スタッフの場合)

相手の母語を使うことにより、相手の価値観やバックグラウンドに沿って手続きやルールなどの説明をおこないやすくなるほか、相手の受け取り方や機微を感じることができ、円滑な就業に繋がるんです。


当事者の声を聞き、積極的に取り入れる

GCCで働く外国籍従業員は過去に日本で働く中で働きづらさを感じた社員が多く、働く外国籍派遣スタッフの立場でサポートを考えることができます。当事者の声は何よりの強みと考え、外国籍社員の声は積極的に意見を聞き取り入れています。


当事者の声から取り入れた事例を少し紹介します。

■イングリッシュ・フライデー

毎週金曜日は終日、職場での会話を英語だけでコミュニケーションをしています。英語が得意でない日本人同士でも英語で会話しています。言葉が思うように通じず不便さを実感するための施策です。

立場を逆転させることで、外国籍派遣スタッフの置かれた状況の想像しやすくなるんです。対面ならなんとなく伝わる内容も、電話やメールなどで伝えようとするとニュアンスまで正確に相手に伝えるのが難しかったりしますよね。


■やさしい日本語

「イングリッシュ・フライデー」を取り入れてみて、何を話しているのかわからないことも、簡単な文章で言ってもらうと理解できることがわかりました。これは、日本語でも同じです。

「土足厳禁」ではなく「靴を脱ぐ」、「休日出勤」ではなく「休みの日に働く」など、話し手の少しの工夫で伝わりやすくなるんです。自分たちで体感したからこそ、派遣先企業や営業担当にも積極的に「やさしい日本語」を活用するように伝えています。

外国籍派遣スタッフのなかには、日本語を話すことができても、読み・書きが難しい方や、その逆の方もおり、それが就労のネックになっていることもあります。一緒に働く方たちが、相手に寄り添って伝える意識も大切ですよね。


■煩雑な事務処理の仕組みを動画で解説

「年末調整の申請や、社会保障の手続きは日本独特で、理解するのが難しい」という外国籍社員の声が大きかったため、派遣スタッフ向けサイトにて、煩雑な事務処理の仕組みを英語・ポルトガル語で動画解説しています。

年末調整を解説する動画の抜粋

導入前は書類の記入ができないなどの理由で申告しない外国籍派遣スタッフがほとんどでしたが、現在はほとんどの人が申告しています。動画で制度の意味や申請の仕方を母語で丁寧に解説すれば、理解が進み、安心して働いてもらうことに繋がるのです。

就業ガイドは英語・ポルトガル語に対応しています


現在は42ヶ国、1,100人以上の外国籍派遣社員が働く

TSの外国籍派遣スタッフ数 TOP5(2023年3月時点)

TSでは、現在は42ヶ国、1,100人以上の外国籍派遣スタッフが全国の派遣先で活躍しています。業種や職種はさまざまで、自動車工場など製造ラインや物流拠点の軽作業、食品工場での加工作業など、大手企業から中小企業まで全国で活躍しています。

製造分野で働く外国人労働者のなかで、ネイティブレベルの日本語の活用が難しい方は、仕事の選択肢が限られているのが現状。ですが、今後は、製造分野で培った経験を生かして異業種や異職種へのチャレンジなど、本人のキャリアビジョンに沿ったキャリアを提示できるようさらにサポートを拡充させていきたいと考えています。

これからも外国人材が安心して活き活きと働ける環境づくりを進めていきたいです。

※内容や肩書は取材当時のものです。


\お読みいただき、ありがとうございました!/

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